リバネスキャピタルの取締役に菊池紳が就任

2021年6月14日より、株式会社リバネス(代表:丸幸弘)の子会社である株式会社リバネスキャピタル(代表:池上昌弘)の取締役として、プラネット・テーブル株式会社の創設者である菊池紳が就任したことをお知らせいたします。

長らく投資ファンド業界で活躍してきた菊池がなぜリバネス キャピタルに参画したのか。リバネスとの出会いから、共に実現したい世界について、リバネスグループCEO丸幸弘との対談を通じてお伝えします。

菊池紳(きくち しん)

慶應大学法学部法律学科卒業。投資銀行、コンサルティング、投資ファンド業界にて企業支援に従事。2013年、農林漁業成長産業化支援機構(官民ファンド)の設立に参画、6次産業化関連の案件開発や投資等に従事。2014年、プラネット・テーブル株式会社を設立し、農産流通プラットフォーム「SEND」を開発・運営。2019年、いきもの株式会社を創業。生命科学や自然科学をベースとした社会変革を手がけるインキュベーター。慶應義塾SFC研究所 上席所員。2021年6月よりリバネスキャピタル取締役に就任。

 

「丸幸弘×菊池紳」対談

ロジカルな金融の世界から、超複雑系の農業の世界へ。

丸幸弘

初めて会ったのは、確か10年くらい前ですよね。

菊池紳

2009年か2010年ですね。リバネスが四谷にあった頃に、僕から会いに行ったんですよ。ソーシャルベンチャーや、ビジネスを通じた社会課題の解決の必要性が言われ始めた時期で、でも個人的には「本気でビジネスを通じた社会実装に向き合ってる人はいるのか?」という疑問もあって。それで丸さんに話を聞いたら完全に本気だった。なんというか「この人はロックだな」と強烈に感じた、というのが最初です。

当時の菊池さんはバリバリの金融バックグラウンドの人でしたよね。

菊池

当時は、直前までプライベートエクイティ・ファンドに籍を置いていました。経歴としては、大学卒業後に外資金融機関に入って、少し戦略コンサルに行って、その後はずっと投資ファンドという流れです。ただ、丸さんと知り合ったのと同じくらいのタイミングで、急に農畜水産の世界に方向転換することになるわけですが。

確か、もともとお母さんの実家が農業をされていたとか。

菊池

はい。なので起業家になりたかったわけではなくて、きっかけは身内ごとだったんです。「こんなに美味しい食べ物をつくる人たちが、何で儲からなくて苦しんでいるんだろう」と。それで、「流通の仕組みの方に問題があるはずだ」「ここを再構築すれば解決できるはずだ」ということで活動を始めて。それが結果的に2015年に立ち上げたSENDというサービスの立ち上げにつながって、産地と都市をシームレスにつなぐ生産者向けの生産支援・出荷プラットフォームを構築していった、という経緯です。

正直にいうと、僕は当時の菊池さんの動きが不思議だったんです。金融のプロでコンサルもできる人が農業をやるというのは、いわば「一番儲かるところから、一番儲からないところに行く」ということじゃないですか。どうしてそっちに行ったんだろう、って。

菊池

金融というのは結局のところバーチャルな世界なので、基本的にはすべての物事がロジックとルールで設計されているんです。でも農業の現場に足を踏み入れてみると、もうわからないことだらけで。リアルな生物、資源、生態系や環境などを相手にする産業は、未解明なことだらけの超複雑系のサイエンスだな、と。それがものすごく面白かったし、それを経験的に相手にする一次産業の奥深さを感じたし、何よりわからないことが悔しくて逆に燃えてきたんですよね。

そうか、金融の世界を知っていたからこそ、両者のコントラストがはっきり見えたんですね。確かに農家の人たちは暗黙知の世界に生きているというか、自分の感覚だけを頼りに良いものをつくるということに非常に長けていますよね。

菊池

生産者個々の経験や技術といった暗黙知と、あとは各地域の集合知とも呼ぶべきものがあって。その2つを可視化できれば多様で面白いんじゃないか、というのはずっと思っていますね。

 

研究と社会の間で途絶えている「知の流通」をブリッジするために。

菊池

農家さんって、研究者っぽいところがあるんですよ。常に観察と研究と実証を繰り返し、再現性を追求している。あの人たちは生涯フィールドワーカーや研究者だな、というのが僕の印象なんです。

それは間違いないですね。

菊池

同時に、そういう人たちが絶えることはあってはならないと思っていて。そこが絶えてしまうと社会の進歩が止まるし、シンプルにいえば僕たちに美味しい食べ物が届かなくなる。だから、深く探究したり、知や価値を生み出している人が、その活動を続けられる世界をつくりたいというのが、僕自身の根っこにあるテーマなんです。

そこがリバネスと完全につながるところですよね。僕たちが支援している研究者は、大学でひたすら基礎研究をやっている。その一方には現実社会があって、知識の実装が求められている。だけど両者の間には深い溝があって、知の流通が途絶えている。ここをうまくブリッジしたいというのがリバネスの根幹ですから。

菊池

実は今の農業は、まさに大学や研究者の知識を必要としている領域です。最近では、自然環境との調和の重要性が叫ばれていますよね。それ自体は大いに結構なのですが、生産者さんにとっては「周辺環境のために農薬を使うべきではない」とか「肥料を入れるべきではない」とか、自分たちばかりがコストやリスクを背負う形で跳ね返ってきてしまう。このアンバランスを解消するために、サイエンティフィックなサポートが必要な状況なんです。

それは農業系の研究者としても、自分の知識を役立てたいと絶対に思っているはずです。

菊池

そうですよね。ただ、研究者自身がそのために起業するかというと、そうとも限らない。研究者が研究を続けるとすると、事業化や社会実装はまた違った人がその役割を担う必要がありますから。つまり、その研究者さん達の知識や技術を「使いこなす」ことで世界を変えていくプレーヤーが必要です。僕はそういう起業家を育てていきたいと思っているんです。

なるほど。これからの農業にはブリッジコミュニケーター的な起業家が必要だ、と。

 

ベンチャーに必要な機能を、適時適切に提供できるインキュベーションファンド。

ブリッジコミュニケーター的な起業家の育成といえば、まさにその代表例がユーグレナです。「ミドリムシで世界を救いたい」という強烈な課題意識をもった出雲充という起業家に、リバネスが全国の研究者をつないでいったというパターンですから。普通のベンチャーキャピタルは特許や技術にお金をつけますが、僕たちは起業家に張りたいタイプなんですよ。

菊池

完全に同意です。特許や技術などのアセットにお金をつけるだけなら、誰がやっても同じ結果になります。知や技術などの「アセットをどう使いこなして、社会を変えるか」に起業家や事業会社の本質がありますから。

でも起業家の側も、ずいぶん前からみんな「ゴールは上場」みたいになっていて。僕はそこにすごく違和感があるんです。

菊池

わかります。僕が若い人たちに聞きたいのは「どんな社会をつくりたいか」ということなのに、彼ら彼女らの多くは「起業=上場」が前提で、資金調達が目的化している場面によく出会います。でも本来、事業家にとってのお金は、事業や組織の規模感や用途に合わせて設計していくものです。大型の調達にも、短期間での上場にも、こだわる必要はありません。お金を出す側の都合に合わせて事業をつくるとおかしくなってしまうんですよ。

菊池さんとは、その辺りの視点が完全に合致していますよね。そこが今回、リバネスキャピタルの仲間になってほしいと思った最大の理由でもあります。そもそも僕がリバネスキャピタルを立ち上げた目的は、若いベンチャーに必要なさまざまな機能を、適時適切に提供するサポートがしたいということでしたから。

菊池

実は僕自身も、個人でインキュベーション型のファンドをつくろうと動いていたんです。「知識と社会をブリッジすることで世界を変えようとしている人たち」を育成したいという思いと同時に、「そういう人たち」と「そこに投資や参加をしたい人たち」をブリッジする活動が絶対に必要だという思いもあったので。ただ、それを本気で考えれば考えるほど、「これはリバネスと組むことになる」という結論にしかならなかった。それで丸さんに「一緒にやりませんか」と言おうと思っていたら、声をかけていただいて。すごいタイミングだな、と。

ちょうどお互いに同じことを考えていたタイミングだったんですよね。

 

世界を変える若い世代には、「お兄ちゃん」「お姉ちゃん」が必要だ。

菊池

インキュベーションという言葉は今や普通に使われていますが、実際にはそれほど簡単な話ではなくて。本来は起業家以上の情熱と、専門性や経験が提供できないと、いくつもの事業の伴走者である「インキュベーター」はできないはずなんです。

おっしゃる通りですね。

菊池

そこでポイントになってくるのが、実は「世代」だと思っていて。これからの世界を変えていく若い世代に伴走する側が顧問的・投資家的な立ち位置になってしまうと、それは伴走というより、指示や指導、取引と報告の関係になりがちなんですよ。

確かに。その一方で、伴走側が起業家と同年代になると仲良しコミュニティになりがちです。

菊池

だからちょうど僕たち「お兄ちゃん、お姉ちゃん」世代が、若い起業家を社会にブリッジさせていくことが必要だと思っています。経営陣並みに議論や実務に入れる近さはもちろん、国や行政、大企業とも話ができて、さらにお金と人のリスク認識や失敗経験も一通りあることが大切です。世代といっても、もちろん厳密に年齢で区切るという意味ではないのですが、体力的にも若い世代と一緒に走れるうちしかインキュベーターはできないな、と日々感じています(笑)。

まだまだ夜更かしできるし、筋トレもしてるぞ、と(笑)。僕たちの世代は、ちょうど団塊ジュニアとミレニアル世代の狭間にいますよね。僕は、その世代を勝手に「ブリッジ世代」と呼んでいて、上の世代と下の世代をつないでいくのが使命だと思っています。

菊池

若いベンチャーのメンバーには、仕事のことでもプライベートのことでも、何かあったときに真っ先に、夜中でも週末でも相談できる存在が必要ですから。失敗しても、やらかしても、味方として話を聞いてくれて、一緒にリスクに立ち向かってくれる存在。僕自身も起業家として、そういう存在の得難さを知っています。ある意味では、ベンチャーのインキュベーションというのは“拡張家族づくり”のような感覚だと言えるかもしれません。

まさに「科学技術の発展と地球献を実現するリバネスファミリー」ですね。これから菊池さんと一緒にやっていけるのが本当に楽しみです。どうぞよろしくお願いします!

菊池

こちらこそ、よろしくお願いします!